東京高等裁判所 昭和43年(う)1450号 判決
被告人 石川與志雄
〔抄 録〕
所論は、原判決が主文において、押収にかかる現金一万二千七百八十円を、本件犯行により得た物で犯人以外の者に属さないものとして没収したのは、法令の解釈、適用を誤つたものであると主張する。
そこで記録を調査するのに、原審は、右現金一万二千七百八十円が、原判示(一)の犯行(原判決の引用にかかる被告人及び原審相被告人前記大須賀一郎に対する昭和四三年二月二一日付起訴状記載の公訴事実)即ち原判示の中山競馬第三日目の第七レースに関するいわゆる呑み行為により得た物であると認めてこれを没収したことは、原判文上明白である。しかるに、共同正犯者の一員である小林こと井上健治(横浜簡易裁判所において本件につき、罰金刑に処せられた。)の検察官に対する昭和四三年二月一二日付供述調書(謄本)及び押収してある右井上の記入にかかるメモ(当庁昭和四三年押第三七〇号の五)によれば、前記現金一万二千七百八十円は、右井上が前記第七レースの外その前に行なわれた第五、第六レースについて賭客から受取つた売上金と混合されたものであること及び右第七レースに関する売上金は原判示のとおり三千三百円であつて、井上はその払戻し等の前に警察官に逮捕されたことがいずれも確認できる。従つて、被告人から、本件犯行により得た物として没収し得る金額は、右一万二千七百八十円中、三千三百円の限度であるといわなければならない。しかし本件の場合、右三千三百円の金員は他の売上金と混合して特定していないのであるから、没収することができない場合に該当するものとしてその価額を追徴するのを相当とする。そうとすれば、原判決が前記一万二千七百八十円を没収したのは、刑法第一九条の解釈、適用を誤つたものというべく、その誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。論旨を理由がある。
(栗本 石田一 金)